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【第1部】 第12話 仲直りとキス①

last update Last Updated: 2025-06-22 17:01:00

 なんでこうなるの?

 私はヘンリーと向かい合っていた。

 先ほど祖父がヘンリーを呼び出し、私の前へと座らせた。

 そこへちょうど通りかかった龍も捕まってしまい、祖父の斜め後ろに座らされることになった。

 居間の中央で正座をし、向い合う私とヘンリー。

 その横では、祖父があぐらをかき腕組みをし、私たちを真剣な眼差しで見つめている。

 そして、その斜め後ろには、硬い表情で私達に視線を送る龍がいた。

 なんなの、この構図は……。

「さあ、存分に語り合うがいい!」

 祖父の掛け声と共に、試合開始のゴングが鳴った。

 いや、私は普通にヘンリーと二人で話したいんだけど……。

 私は気まずくて、さりげなくヘンリーのことを盗み見る。

 ヘンリーは先ほどからずっと下を向いたまま、私と視線を合わせない。

 私は意を決して切り出した。

 せっかくの機会なんだから、ここで謝らなきゃ私じゃない!

「ヘンリー、あの……さっきは、ごめんね」

 気合を入れたくせに、私の声はだんだん尻すぼみになっていく。

 しかし、ヘンリーは勢いよく顔を上げ、私のことをまじまじと見つめてきた。

「……なんで流華が謝るの?」

 本当にわからないという表情で、その潤んだ瞳を私に向ける。

「だって、私、ヘンリーに酷いことを」

「ううん! 僕が悪いんだよ。流華の気持ちも考えずに一方的につきまとって。

 ……僕はやっぱり駄目だね。今まで誰にも怒られたことなかったから、何が駄目なことなのかわからないんだ。

 でも、流華は正直に僕に気持ちをぶつけてくれた、嬉しかったよ。

 流華に嫌われてしまったことは、すごく悲しいけど……また好きになってもらえるまで僕あきらめないから、頑張るから!

 傍にいることを許してほしい」

 ヘンリーは懇願するように、その綺麗な顔を私に近付ける。

 どうやら、私たちの間で誤解が生じているようだ。

「あのねヘンリー、私は別にあなたのこと嫌いになってないよ。

 ただ、もう少しだけ私に自由な時間がほしかっただけで。なのに、あんなにきつい言い方しかできなくて。私も反省してたんだ。

 ……ヘンリーこそ、私のこと、怒ってないの?」

 私は恐る恐る窺うようにヘンリーを見つめた。

「怒る? なんで? 僕が流華のことを嫌ったり、怒ったりするわけないだろ」

 ヘンリーが私の手をぎゅっと握り、顔を至近距離まで近づけてくる。

 一瞬息が止まり、心が高鳴った。

「僕はまだ流華の傍にいて、いいの?」

 キラキラと輝く瞳が私を捉える。

 なんだか、吸い込まれていきそうだ。

「……もちろんだよ。私もヘンリーがいないと寂しい。

 ただ、四六時中一緒っていうのは、やめてね」

 私が微笑みかけると、ヘンリーは嬉しそうに何度も頷いた。

「わかった、努力するよ! また気に喰わないことあればすぐに言ってね。

 僕、流華のためならどんなことでもするから」

 なぜかヘンリーの顔がどんどん近づいてくる。

 私は逃げることもできるはずなのに、体が言うことを聞かず、動けない。

 彼のことを待って、る?

 一体、私はどうしたっていうの!

「うぐっ」

 ヘンリーが突然変な声を出したので、私はいつの間にか閉じていた目を開けた。

 なんと、ヘンリーが龍に羽交い絞めされているではないか。

「ちょ、龍! 何してるのっ」

「お嬢、なんでじっとしているんですか! こいつはお嬢にキスしようとしてるんですよ!」

 龍に言われてはっとする。

 そういえば私、いつもヘンリーにキスされそうになっても逃げていない。

 なんでかな……だって、嫌じゃない、から?

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